Tuesday, March 08, 2011

茨木のり子 永遠の詩 02 評



詩人、茨木のり子の代表作を集めた詩集。

戦中期にあたる少女の頃、「ほっそりと/蒼く/国をだきしめて/眉をあげていた/菜ッパ服時代の小さいあたし」から、亡くした夫を想い、自らの死を思う晩年まで、時期も素材もさまざまな詩が収録されている。選と、各詩に短く添えられた解説文は、詩人の高橋順子による。

茨木のり子の詩は広く読まれ、そのいくつかはネットで手軽に読むことができるが、身銭を切って詩集を買い、居住まいを正して、食物をゆっくりと味わい咀嚼するように作品を読む悦びには比べようもない。

彼女の詩の味わいを簡単な形容詞でまとめることは不遜であるかもしれないが、どの作品もたおやかで、弱い者への眼差しは、優しく、厳しい。

本詩集にもいくつか収録されている、1975年に逝った夫を回顧する詩は、彼女の死後に見つけられ、詩集『歳月』にまとめられたという。表題作『歳月』や『夢』などの作品は初めて読んだが、彼女の変わらぬ夫への愛が、夫の不在への鋭い感受性が胸を打つ。優しいのに哀しく静謐で、よく知られた彼女の詩とはかなり趣を異にする。

惰性で日々を過ごすとき、ものを考えずに流されるとき、退屈に気が散り居心地悪いとき、孤独が淋しく苦しいとき、美しい自然やことばに感じなくなったとき、居住まいを正して、何度も何度も彼女の詩を読もうと思う。




4 comments:

Fukushi said...

恥ずかしながら、お読みしたことがないので、今度勝って読んでみるね。

Fukushi

Taku said...

コメントありがとう!!代表的な作品はネットでもすぐに出てくるよ。何か心に訴えるものがあったらぜひぜひ読んでください。

nao said...

こんばんは、直です。今日、この詩集を購入しました。
茨木のり子さんの詩集が以前から欲しかったのですが、どれを買おうか迷っていたときに、いつもと変わらぬすてきな書評をどうもありがとうです。

とくに、『落ちこぼれ』『この失敗にもかかわらず』『食卓に珈琲の匂い流れ』が好きです。

Taku said...

わ、直さん!ありがとう!僕も『食卓に珈琲の匂い流れ』初めて読んで深く印象に残りました。昔から親しんでる『落ちこぼれ』『汲む』や『木の実』も忘れられないです。

僕は、亡くなった夫を思った『夢』という詩では、胸が苦しくなるほどでした。

北海道でも震災の影響で仕事に大きな支障が出ていると聞いています。僕でよければ、話を聞くことくらいなら、そして、ささやかな必要なものを送ることくらいならできると思うので、何でも言ってくださいね。

ブックレビューいつも読んでくださってるの本当にうれしい!!僕も直さんペースで読めるようになりたいよ…。