Sunday, January 23, 2011

Michael Jackson's "This Is It" 映画評


Michael Jackson は死んだが、死んだことが信じられない。束の間、ほんの2時間足らず、彼は甦った。あるいは、彼は生きていたのだと錯覚した。そういう映画だった。 

とは言っても、たとえば戦争映画でよくあるように、生者が、英雄たるべき死者を墓場からむりやり引きずり出したわけではない。この映画は、彼の死によって中止になったThis Is It (ロンドンで開催されるはずだった、彼最後のコンサートの名) のリハーサル風景と、共演者のごくわずかのインタビュー(彼が生きているときのものだろう)をもとに構成されている。だから、観客はいない。ライブ以上の演出があるわけではない。ただ、リハーサルのときの「完璧主義で」「フレンドリーで謙虚な」MJを淡々と映し出すだけだ。すばらしい音楽、彼の手足(extensions)となったかのようなダンサーたちとのぞくぞくするほどのダンスに、彼は懇切に創意工夫を加える。現場はいつも温かい雰囲気で、皆が彼を心底尊敬している。そんな風景を巧みに切り取って、提示してみせる。 

 だからこそ、彼は今でも、”I’ll be there.” (そこにいるよ)と私たちに語りかけてくる。未完のライブが完遂されることはもうない。でも、だからこそThis Is Itの中のMJもまた、永遠なのだ。





No comments: