Thursday, October 25, 2007

夢の話

ぬるいお風呂に浸かりながら脳科学者の茂木健一郎の本を読んでいた。本の中で、彼が箱庭療法を受けた話、そして、彼が見た夢を書き記しておく習慣があるという話に至った箇所で、突然、昨日見たとても奇妙な夢の話を思い出した。その夢は、強烈な印象を残して僕を眠りの外に引きずり出した。夢と現の間を行き来しながら、これは忘れることができないと思ったのだけど、再び目が覚めたときにはすっかり記憶の外側に行ってしまっていた。全くの偶然でその夢の記憶が蘇ると、もう、活字が頭に入ってこなくなった。

グロテスクなことを書くので、苦手な人は読まないでね(本当に)。

………

僕の足元に、白っぽい、両手で抱えるくらいの大きさの袋が飛び出してくる。
袋は突然破れて、中から、巨大な心臓が現れる。
心臓は、中央がへこみ、どくん、どくん、と動いている。
赤黒い血液でどっぷりと濡れている。
まだ、動いている、と思う。
血液がみるみる間に溢れ出す…。

ふと前を見ると、左右に二つの巨大な風船がある。白くて、中は見えない。
右側の風船が破裂する。
数人の、首をつった人が現れる
皆、白い服を着て、白い布で頭を覆われている。
次に、左側の風船が破裂する。
女の子が数人、首枷をつけられている。
中に、一人知っている女の子がいる。
僕は、必死で、「見るな!」と叫ぶ…。

………

あれだけ強烈な印象を残した夢のことを、すっかり忘れてしまっていたのは驚きだった。
夢の中で、あるいは目覚めた直後、夢を覚えておきたいという強烈な思いに駆られることがある。でも、それらの夢は、ほとんど全て、朝露のように消えてしまう。
茂木健一郎が、箱庭療法で無意識の世界が表出されることに驚きを表明していたが、無意識の世界は、覚醒しているときには想像もできないほど、深く、広く、不条理だ。

無意識の階段を降りてみたいと思う。
海の底に沈んだ記憶や思念に触れてみたいと思う。
でもきっと、それらは、一度も掬い上げられないままに、僕という存在が消えてしまう。
それらの記憶や思念が僕を形づくっているのだとしたら、それは、とても、不条理だ。

Monday, October 22, 2007



昭和天皇と原爆投下

ニコニコ動画ってサイトで古い映像を見ていたら、広島の原爆投下について、昭和天皇が記者会見で、

「原子爆弾が投下されたことに対しては、遺憾には思ってますが、こういう戦争中であることですから、どうも、広島市民には気の毒であるが、やむを得ないことと私は思ってます」

と発言する映像があったんです。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm554496

前の内閣の防衛大臣が、原爆の投下を「しょうがなかった」と形容したときには、「何てことを言う人なんだろう」と思ったけれど、昭和天皇がこのように言うとは…。

僕は、天皇制、とりわけ、昭和天皇と言う人間を、外部からの批評的な視点で見ることができません。僕は昭和56年生まれだから、昭和天皇についての記憶は極めて限定的なものだけれど、それでも、触れてはいけないような畏怖の感情があります。それは、戦前において日本人の精神性を纏め上げていた現人神への畏れであり、敗戦後というまったく違う国家体制において、なお、大多数の日本人に尊崇されていたことへの畏れでもあります。日本の戦前と戦後というような、根底から異なるような二つの国家システムの両方において、国民から畏敬の念を持って見上げられ、神格化された人間を、世界史上、僕は寡聞にして知りません。

1793年、フランス国民は国王ルイ16世を断頭台に送ったけれど、戦後、昭和天皇は断頭台に送られることはありませんでした。アメリカを中心とする占領国軍は、天皇の戦争責任を追及することは日本国民の反発を招くと判断し、実際、この方針は大多数の日本人によって歓迎されました。概して言って、日本における天皇の地位は、戦中も戦後も安定した国民のコンセンサスを得続けてきました。今日でも、君が代や日の丸や靖国に奉られたA級戦犯に反発する国民も、天皇制に反発することは極めてまれです。皇室に批判的な言説は公共空間ではまず許容されない。ごく客観的に言って、これは不思議なことです。

高校時代に、日本史の先生が、「昔ある生徒から『なぜ、日本史において天皇制は途絶えなかったのか』と質問されたことがあるが、答えることができなかった」と話していたのが印象的です。

この映像を見たとき、僕は本当にびっくりしました。月並みな言い方だけど、「耳を疑い」ました。防衛大臣どころか、「当事者」なんだから。 でも、僕は、この発言を断罪するような勇気を持ちません。「昭和天皇」について、僕は、僕が生まれるずっと前に存在した神格化された天皇像を抱えながらも、戦前と戦後の捩れの中で消化不良を起こし、禁忌として僕の内部に残っているような気がします。

" Hirohito and the Making of Modern Japan"(邦訳『昭和天皇』)や"Embracing Defeat"(邦訳『敗北を抱きしめて』)のような本が気になっていたのだけれど、外から見た日本をふまえてみると、この複雑な感情も説明がつくのかもしれない。

Thursday, October 11, 2007


ミランダ効果(the Miranda Effect)
BBC reported this Tuesday (Wednesday in Japanese time) the Miranda effect, which has been observed in the U.S. these days and was named after one of the main characters in an American TV drama “Sex and the City.” In the show, Miranda is a high-flying lawyer and a graduate of Harvard. Her aggressiveness sometimes scares off men who try to ask her out.
The Miranda effect boils down to high-achieving women pretending to be less successful than they really are, for fear that they might make their potential partners feel uncomfortable and threatened.
Does it happen everywhere? They conducted an interview in London. One woman said that women should be more confident. Another woman said that when men enjoy their relationships women can feel more powerful. One man said that he looked for something more than what their career or achievement might be and that career is only a transitory thing after all. Another man said that if his career was in decline he might feel very threatened.
As for me, the Miranda effect seems understandable because I often feel inferior to others. I would feel insecure in front of women like Miranda, though I also find it difficult to get on with male go-getters.
Here in Japan, too, the Miranda effect might become more commonplace as more and more women are socially or financially successful. I imagine a lot of career women are already trying to look less important than they are in front of men in their minds.
Career pressure and the new game between mediocre salarymen and competent career women. A tough challenge for new-generation ladies!

火曜日発信のBBC News Podcastを聴いていて知ったんだけど(イギリスとの時差の関係でちょっと遅いです)、今アメリカでは、「ミランダ効果」(the Miranda Effect)というのが話題だそうです。 ミランダというのは、もちろん、Sex and the Cityに登場する、ハーバード大学出身の女性弁護士です(すごいね)。特に女性の方の間では、SATCって根強い人気がありますよね。僕はこのドラマを少ししか見たことがないのであまり詳しいことは知らないんだけど彼女の勝気な性格が男の人を敬遠させているんです。


で、「ミランダ効果」というのは、経済的にも社会的にも成功している女性が、相手の男性をビビらせちゃって遠ざけちゃわないように、わざと、そんなに成功していないように振る舞うこと。


ロンドンでの街頭インタビューでは、「女性はもっと自信を持つべき」という女性、「キャリアなんて永遠に続くものじゃない。キャリアより大切なものがあるよ」っていう男性、「男性が楽しんでくれたら女性は心強く感じる」という女性、「僕は仕事がうまくいってなかったら、怯えちゃうな」っていう男性などなど、いろんな意見が紹介されてました。


僕は…僕は、人よりコンプレックスが強いほうなので、この「ミランダ効果」は結構よくわかります。ミランダみたいな女性の前では怖気づいちゃうタイプかもしれない。いや、相手が男性であっても、アグレッシブなタイプの人の前では結構怖気づいちゃうんだけど。


日本でも、これからますます女性の人が社会的に、あるいは経済的に「成功」するようになっていくにつれて、この「ミランダ効果」が意識されるようになるかもしれない。すでに、こういうことを意識している女性もたくさんいると思うし。


女性にとっては大変ですね。